21世紀を真に明るく希望に満ちたものにする道標
　　　　　　　　　３冊の著作の出版によせて

　令和2年当初から始まった新型コロナウイルス感染は、瞬く間に世界中に拡大して、感染者数は既に一億人を突破し、死者数も200万人を超えています。わが国でも感染が拡大し、緊急事態宣言が発出されたことは既にご承知の通りであります。そして、このコロナ禍は、物質的、経済的豊かさのみを追求してきた世界にとって警鐘ともとれる大災禍となり、世界情勢の混乱、闘争はその深刻さを増しています。そうした中で、世界の社会的な病理と、その脆弱性があらわになってきました。また、地震と大津波、深刻な原子力災害によって震災関連死を含めて2万人余の犠牲者を出した東日本大震災から10年の節目を迎えましたが、その悲しみと傷は未だ癒えてはおりません。

　世界は富を持つ者と持たざる者との格差を増大させ、持つ者は更にそれを追求し、他人を歯車のように扱い、持たざる者はそれを羨み、嫉妬し憎しみの連鎖を拡大しています。今や富の獲得は生きる目的となって、その獲得競争が世界を、社会を混乱と闘争と犯罪の巣窟としているのです。誠に憂えるべき情況です。

　それは将に先生が既に警告されておられたように、持つ者、持たざる者、双方が複雑な社会機構の中で極度の緊張を強いられ自己破壊的衝動をつのらせ虚無感を増幅させ、神経症となり憎悪の時代を招き、自他を滅ぼし、延いては人類全体に破滅の危機を齎そうとしているのです。人類は完全に生きる目的と意義を見失ってしまいました。その結果として、今般の感染症の拡大、地球環境の破壊、政治経済の行き詰まり等を招来し、私達、人類を滅亡の危機に追いやっています。外圧による破滅より、さらに恐れるものは、先にあげた人間の内部からの崩壊であります。外圧によっては人間が人間であることを止めはしない。しかし、人間自身の内部崩壊は、人間そのもの崩壊に繋がるものです。報道などでも人類が2030年までにその方向を変えなければ、滅亡の危機が訪れると予測しています、しかし、それだけの余裕があるのかはなはだ疑問であります。科学者や識者が考えたことが、東日本大震災、その他の災害をことごとく予見できなかったことを考えますと、今日の科学的知見によって予見は不可能なのであります。危機は人知を超えて突然やって来ます。それに備えなければなりません。

　世界の識者は今頃になって、利他主義とか持続可能の社会の構築を訴えていますが、未だ人類の方向を、その生き方を変える力とはなっていません。利他主義というものは、あくまで対象としての他人であり、二元論から一歩も出ていない西欧流のものの考え方であります。

　翻って伝統的日本の叡智は、全てを対立軸における対象ではなく、万物即ちあらゆる生きとし生けるもの、目に見えない世界をも含めて、あらゆる事物を慈しみ、それと調和し、万物と共に生き、自他一体感の中で、敬神崇祖の思想を連綿と今日まで伝えてきております。自分も良かれ、他人も良かれという全くの共生であり、共に生きることに価値を見出してきた思想なのです。

　先生は卓越した精神的能力と慧眼を以て、伝統的日本の叡智が将来の世界にとって、大きな師表となり、それが大きなうねりとなって、今、起ころうとしている、いや今起こっている人間自身の崩壊を、自己破壊的衝動から救い、人類の画期的進運に貢献することが出来ると断言されておられたのです。

　今般、本会が企画制作し、風詠社から出版された下記に示す新著三冊「幽玄の世界」追補版、「叡智への道標」「自らの道を選べ」は、人類に課せられた解決困難な諸課題を解決に導き、将に世界人類にとって、21世紀を真に明るく希望に満ちたものにする道標であり、副題にありますように真の人間性の回復を目指すものなのです。

　多くの苦悩を抱え、人類の将来を憂い、人生を真剣に真実に生きようとする諸兄姉に対して、この三冊の著作を手に取って読まれて、今日のコロナ禍にあって、人間とは何かの構想、真に生きる目的と意義とは何かを問い直し、日本と日本文化の本質の素晴らしさを発見し、各々の人生を充実したものに変革し、一人一人が新しい日本、いや世界の明るい未来を建設するための柱になっていただきたいと切に願うものです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　わたつみ友の会広報部